飲み会で、前より静かになった自分に気づいている
飲み会が嫌いになったわけではない。
誘われれば行くし、行けば楽しいとも思う。でも、気づいたら話す量が減っていた。
以前は輪の中心に近いところにいた気がする。笑いを取ろうとして、話が長くなって、それでも誰かが笑ってくれていた。
今は、聞き役が多くなった。うなずいて、少し笑って、話を促す側に回っている。
なぜ変わったのかを、しばらく考えなかった。
「歳を取ったから」でも「落ち着いたから」でもいい、と思っていた。そういう理由で片づけておけば、深く考えなくて済む。
でも、ある夜の帰り道に、ふと気づいた。
話しているとき、口が乾いた感覚があった。そしてその乾いた感覚のあとに、少し口の中が気になる。飲んでいるから乾くのは当然だが、そのにおいが気になって、気づいたら口を大きく開けて笑うことを少し躊躇していた。
「前より静かになった」の裏側に、それがあったのかもしれない。
アルコールは口の中を乾燥させやすい。
唾液には自浄作用があって、口腔内の菌や食べかすを洗い流し、においの発生を抑える働きをする。飲酒中に唾液が減ると、嫌気性菌が活発になりやすい環境になる。
嫌気性菌は酸素の少ない場所で、たんぱく質を分解して揮発性硫黄化合物(VSC)を生み出す。硫化水素やメチルメルカプタンがその代表で、これが口臭の主な原因だ。飲み会の後半に口臭が強くなりやすいのは、こうした仕組みがある。
口臭は自分では気づきにくい。
自分の口から出るにおいに嗅覚が慣れているから、強くても「いつもどおり」に感じてしまう。だから「気になる」というあいまいな感覚だけが残る。
誰かに指摘されたことはない。でも、自分の中で「話すと口が気になる」という感覚が積み重なって、少しずつ話す量が減った。意識したわけではないが、体が勝手に調整していた。
そういう調整を、本当はしたくない。
飲み会で静かになるのが「歳のせい」や「落ち着き」ではなく、においへの不安のせいだとしたら、それはつまらない。
口腔内の環境を変えることで、その不安が小さくなれば、話す量が戻るかもしれない。
もどりたい、というより、そっちの方が自然だと思う。
飲み会が嫌いになったわけではない、と最初に書いた。
それは本当のことだ。だから、また輪の中心に近いところで笑っていたいとも思っている。
静かになった理由が、においへの警戒だったとしたら、そこから変えればいい。
それだけのことだと思って、少し続けてみることにした。