会議室でワキガの話が出たとき、誰も自分を見ていないか確認した

平日午後3時、会社の会議室

それは雑談だった。
会議が始まる前の数分間、誰かが「この前、電車でワキガの人の隣になって」と言い始めた。

ただの話だ。悪気もない。よくある雑談だ。
でも自分は、そのとき誰の顔も見られなかった。


夜11時半、自室の机

視線を下に落として、スマホを触るふりをした。
周りが笑っているのを音で感じながら、「自分を見ている人がいないか」を確認することだけを考えていた。

誰も自分を見ていなかった、と思う。
でも確信できなかった。その会議が終わるまで、ずっと体の右側が緊張していた。脇の下が。


こういうことが、たまにある。
ワキガに関する話が出ると、反射的に「自分のことではないか」と考える。

自分ではにおいがわからない。それが一番つらいところだ。毎朝シャワーを浴びて、制汗剤を使って、清潔にしているつもりでいる。でも「つもり」というのは、確認できないことへの言い訳でもある。

実際にワキガかどうか、自分で断言できる人間はほとんどいない。においは自分に一番届かない。


その日の夜、はじめてちゃんと調べた。
ワキガの原因。セルフチェックの方法。ケアにどんな選択肢があるか。

調べる前は「知らなければいい」と思っていた部分があった。知れば確定してしまうような気がして。でも知らないままでいるのは、会議室でずっと緊張し続けることだとわかった。


セルフチェックは、耳の中を見ることでもできる。
耳垢が湿っているタイプ(飴耳)の人は、アポクリン腺が活発な傾向があるとされている。100%ではないが、ひとつの目安にはなる。

自分は湿っていた。

調べたからといって、即座に何かが変わるわけではない。でも「気になっていること」に名前がつくと、向き合い方が変わる。会議室でのあの緊張感が、だんだん小さくなっていった。