ベッドに入る前から、今夜も眠れないかもと思うようになった

夜11時40分、寝室のベッドサイド

歯を磨いているとき、もうその予感がある。

「今夜もたぶん眠れない」。言葉にするほどでもないけれど、体の中のどこかが、すでにそう構えている。布団に入る前から、目が冴えている感じがある。疲れているのはわかる。眠れそうな気もする。でも、「眠れないかも」という予感の方が先に来る。

これが始まったのはいつだろう。半年前?1年前?気づいたときには、「布団に入ること」と「眠れないかもしれないこと」がセットになっていた。


夜0時43分、ベッドサイドの小さなテーブル

「眠れないかも」という予感は、残念ながら眠れなさを呼ぶ。

これは「予期不安」と呼ばれるメカニズムで、「また失敗するかもしれない」という不安が、実際にその状況を難しくしてしまうことがある。試験前の「また緊張して頭が真っ白になるかも」という予感が、緊張を増幅させるのと同じ構造だ。

睡眠においては、「今夜も眠れないかも」という思考が始まると、体は「警戒モード」に入る。交感神経が優位になり、心拍数が少し上がり、体温が下がりにくくなる。眠りに入るためには、体温が少し下がり、副交感神経が優位になることが必要なのに、その準備を予期不安が邪魔する。

一度「眠れない夜」を経験したことで、布団が「眠れない場所」として脳に記憶される。そのパターンが繰り返されるうち、ベッドに入ること自体が「眠れない予感」のトリガーになっていく。これを「条件付けられた覚醒」という。


ここで問題なのは、「眠ろうとすること」が逆効果になり始めることだ。

眠ろうとすればするほど、眠れなくなる。「眠らなければ」という意識が覚醒を高める。ため息が出る。また「眠れていない」という事実を確認してしまう。その繰り返しが、夜を長くする。

慢性的な不眠に悩む人の多くが、この「眠ろうとすること」の罠にはまっている。眠りとは、追えば追うほど逃げる、という性質を持っている。「眠ること」を目的にするのではなく、「体を休める」ことを目的にする方が、実際には眠りにつながりやすい、という考え方もある。


「今夜も眠れないかも」という予感は、これまでの積み重ねから来ている。

だから、一夜で変わるものではない。でも、そのパターンは変えられる。布団に入るときの体の状態を少しずつ変えること、眠れなかった夜に「また失敗した」と思わずに済む構えを作ること、神経系が「今夜は休んでいい」と感じられるような環境や習慣を積み重ねること。

予感は現実ではない。今夜が昨夜と同じになるとは決まっていない。そう思えるようになるには、いくつかの夜が必要かもしれないけれど、少なくとも「布団に入ること」と「眠れないこと」の結びつきを、少しずつ解いていく方法はある。

歯を磨いているときの「また今夜も」という予感が、いつか「今夜はどうかな」という軽さに変わることを、望んでいる。