ドラッグストアの育毛コーナーで15分以上立っていたことがある
気づいたら、ずいぶん長い時間そこに立っていた。
育毛剤のコーナーは、たいてい棚の端の方にある。シャンプーと整髪料の間あたり。並んでいる商品のパッケージを一本ずつ読んでいたら、15分以上経っていた。有効成分の欄を読んで、価格を見て、また別の商品の成分欄を読む。ミノキシジル、センブリエキス、ニンジンエキス、パントテン酸。聞き慣れない成分名が並んでいて、どれが効くのかまったく判断がつかなかった。
結局、何も買わずに帰った。「もう少し調べてから」と思ったからだ。でも帰ってから調べたわけでもなく、次のドラッグストアでまた同じように立って、また何も買わずに帰った。
育毛コーナーに並ぶ商品を前にして途方に暮れる感覚は、あながち自分だけじゃないと思う。
情報が多すぎるのかもしれない。「医薬品」と「医薬部外品」と「化粧品」が同じ棚に並んでいて、それぞれ効能の書き方が微妙に違う。「発毛を促す」「育毛」「抜け毛予防」——どれも似ているようで、法律上の分類は異なる。選ぶ基準がわからないまま、パッケージのデザインと価格だけを見比べることになる。
少しだけ仕組みを知っておくと、棚の前で迷う時間が短くなるかもしれない。薄毛が進む主な原因のひとつは、毛根のミニチュア化と呼ばれる現象だ。本来は数年かけてゆっくり成長するはずの髪が、男性ホルモンの影響で成長期が短縮され、細くて短い髪しか育てられなくなる。毛根が小さくなるほど、元に戻すのが難しくなる。そういう構造を知った上で商品を選ぶと、「何のために使うのか」が少しはっきりする。
成分でいえば、日本で唯一「発毛」の効能を認められているのはミノキシジルという成分だ。それ以外の成分は、育毛(すでにある髪を健やかに保つ)や抜け毛予防の範疇に入る。どちらが正解ということではなく、自分が今どの段階にいるかによって選ぶものが変わる。
棚の前で15分立っていたことは、無駄じゃなかったと思う。
気になっていた、という事実がある。何もしていなかったわけじゃなくて、動こうとしていた。ただ、選択肢が多すぎて、判断の基準がなかっただけだ。
何かひとつ手に取ってみることは、調べ続けることより情報量が多い。使ってみると、自分の頭皮がどう反応するか、続けられる習慣かどうか、わかることがある。完璧な選択をしようとするより、まず一本試す方が、次の判断に近づく。
棚の前に立ち続けていた時間が、そろそろ終わってもいいかもしれない。